私たちが日頃利用している「高速道路」。
実は高速道路というのは通称で、正式名称は「高規格幹線道路」であるということをご存じですか?
01 高規格幹線道路とは
高規格幹線道路とは「自動車が高速で走れる構造の自動車専用道路」のことで、「高速自動車国道」と「一般国道の自動車専用道路」を合わせたものを指します。そして私たちが日常的に「高速道路」と呼んでいる道路のほとんどが、実はこの「高規格幹線道路」のことを指しています。
高速道路、高規格幹線道路について深掘りをする前に、高規格幹線道路の歴史を振り返ってみましょう。
02 高規格幹線道路の歴史
「日本の高速道路ネットワーク整備の扉」は、ワトキンス・レポートによって開かれます。
戦後、日本政府が高速道路設立のため世界銀行に融資を求めた時、日本の道路状況を調査するためにワトキンス率いる調査団が世界銀行より派遣され、1956年5月から80日間に渡る調査を行いました。
“「日本の道路は信じ難い程悪い。工業国にしてこれ程完全にその道路網を無視してきた国は日本の他にない。」”
日本の道路状況への苦言と高速道路の重要性を説いたレポートにより政府は道路整備への予算を増加させ、「国土開発縦貫自動車道建設法」と「高速自動車国道法」を制定し、ついに高速自動車国道の整備が始まりました。
1987年の道路審議会での答申を基に、建設省は「自動車での高速交通を図るために必要な道路で全国的な自動車交通網を構成する自動車専用道路」のことを「高規格幹線道」とし、高規格幹線道路網計画を決定しました。
【高規格幹線道路の機能(6要件)】
- ① 地方の中心都市を効率的に連絡
- 地域の発展の拠点となる地方の中心都市を効率的に連絡し、地域相互の交流の円滑化に資するもの
- ② 大都市圏の近郊地域を環状に連絡
- 大都市圏において、近郊地域を環状に連絡し、都市交通の円滑化と広域的な都市圏の形成に資するもの
- ③ 重要な空港・港湾と高規格幹線道路の連絡
- 重要な空港・港湾と高規格幹線道路を連絡し、自動車交通網と空路・海路の有機的結合に資するもの
- ④ 高速交通サービスのナショナルミニマムの確保
- 全国の都市、農村地区からおおむね1時間以内で到着し得るネットワークを形成するために必要なもので、全国にわたる高速交通サービスの均てんに資するもの
- ⑤ 災害発生等に対する高速交通システムの信頼性の向上
- 既定の国土開発幹線自動車道等の重要区間における代替ルートを形成するために必要なもので、災害の発生等に対し、高速交通システムの信頼性向上に資するもの
- ⑥ 既存の高規格幹線道路の混雑の著しい区間の解消
- 既定の国土開発幹線自動車道等の混雑の著しい区間を解消するために必要なもので、高速交通サービスの改善に資するもの
このような歴史を経て、高速道路ネットワークの整備は現在も続いています。
03 高規格幹線道路の種類
高規格幹線道路、通称高速道路は、「高速自動車国道」と「一般国道自動車専用道路」の2種類に分類されます。
それぞれを詳しく見てみましょう。
03-01 高規格幹線道路の種類①高速自動車国道
高速自動車国道は、高速自動車国道法第四条に基づき制定された自動車専用道路のことで、「自動車の高速交通の用に供するとともに全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し、かつ政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡する道路」とされています。
路線名 | 起点 | 終点 | |
北海道縦貫自動車道 | 函館市 | 稚内市 | |
北海道横断自動車道 | 根室線 | 北海道寿都郡黒松内町 | 根室市 |
網走線 | 網走市 | ||
東北縦貫自動車道 | 弘前線 | 東京都 | 青森市 |
八戸線 | |||
東北横断自動車道 | 釜石秋田線 | 釜石市 | 秋田市 |
酒田線 | 仙台市 | 酒田市 | |
いわき新潟線 | いわき市 | 新潟市 | |
日本海沿岸東北自動車道 | 新潟市 | 青森市 | |
東北中央自動車道 | 相馬市 | 横手市 | |
関越自動車道 | 新潟線 | 東京都 | 新潟市 |
上越線 | 上越市 | ||
常磐自動車道 | 東京都 | 仙台市 | |
東関東自動車道 | 館山線 | 東京都 | 館山市 |
水戸線 | 水戸市 | ||
北関東自動車道 | 高崎市 | 那珂湊市 | |
中央自動車道 | 富士吉田線 | 東京都 | 富士吉田市 |
西宮線 | 西宮市 | ||
長野線 | 長野市 | ||
第一東海自動車道 | 東京都 | 小牧市 | |
東海北陸自動車道 | 一宮市 | 砺波市 | |
第二東海自動車道 | 東京都 | 名古屋市 | |
中部横断自動車道 | 清水市 | 佐久市 | |
北陸自動車道 | 新潟市 | 滋賀県坂田郡米原町 | |
近畿自動車道 | 伊勢線 | 名古屋市 | 伊勢市 |
名古屋大阪線 | 吹田市 | ||
名古屋神戸線 | 名古屋市 | 神戸市 | |
紀勢線 | 松原市 | 三重県多気郡勢和村 | |
敦賀線 | 吹田市 | 敦賀市 | |
中国縦貫自動車道 | 吹田市 | 下関市 | |
山陽自動車道 | 吹田市 | 下関市 | |
中国横断自動車道 | 姫路鳥取線 | 姫路市 | 鳥取市 |
岡山米子線 | 岡山市 | 境港市 | |
尾道松江線 | 尾道市 | 松江市 | |
広島浜田線 | 広島市 | 浜田市 | |
山陰自動車道 | 鳥取市 | 美祢市 | |
四国縦貫自動車道 | 徳島市 | 大洲市 | |
四国横断自動車道 | 阿南市 | 大洲市 | |
九州縦貫自動車道 | 鹿児島線 | 北九州市 | 鹿児島市 |
宮崎線 | 宮崎市 | ||
九州横断自動車道 | 長崎大分線 | 長崎市 | 大分市 |
延岡線 | 熊本県上益城郡御船町 | 延岡市 | |
東九州自動車道 | 北九州市 | 鹿児島市 |
表に「東名高速、新東名高速、名神高速、新名神高速」の名前がないことにお気付きでしょうか。
実は、それぞれの道路の正式名称は
- 東名高速道路 ⇒ 第一東海自動車道
- 新東名高速道路 ⇒ 第二東海自動車道横浜名古屋線
- 名神高速道路 ⇒ 中央自動車道西宮線
- 新名神高速道路 ⇒ 近畿自動車道名古屋神戸線
このようになっています。NEXCO西日本によると、
「東名高速、名神高速というのは通称だが、広く一般的に馴染んでいることから呼称として用いている」
ということです。
「高速道路網の中でも大動脈ともいえる4つの路線の呼称が高速道路」であるということが、「高規格幹線道路全体の呼称が高速道路となっている理由」なのかもしれません。
03-02 高規格幹線道路の種類②一般国道自動車専用道路
一般国道自動車専用道路とは国土交通大臣指定に基づく高規格幹線道路のことで、1987年の国土開発幹線自動車道建設法の一部改正により、高速自動車国道と合わせて全国的な幹線道路網を構成する役割を果たしています。
路線名 | 国道路線名 | 起点 | 終点 |
日高自動車道 | 苫小牧市 | 浦河市 | 国道235線 |
深川・留萌自動車道 | 深川市 | 留萌市 | 国道233号 |
旭川・紋別自動車道 | 旭川市 | 紋別市 | 国道450号 |
帯広・広尾自動車道 | 帯広市 | 広尾市 | 国道236号 |
函館・江差自動車道 | 函館市 | 江差市 | 国道228号 |
津軽自動車道 | 青森市 | 鰺ヶ沢町 | 国道101号 |
三陸縦貫自動車道 | 仙台市 | 宮古市 | 国道45号 |
八戸・久慈自動車道 | 八戸市 | 久慈市 | 国道45号 |
首都圏中央連絡自動車道 | 横浜市 | 木更津市 | 国道468号 |
中部縦貫自動車道 | 松本市 | 福井市 | 国道158号 |
能越自動車道 | 砺波市 | 輪島市 | 国道470号 |
伊豆縦貫自動車道 | 沼津市 | 下田市 | 国道1号 国道136号 国道414号 |
三遠南信自動車道 | 飯田市 | 浜松市 | 国道474号 |
東海環状自動車道 | 四日市市 | 豊田市 | 国道475号 |
京奈和自動車道 | 京都市 | 和歌山市 | 国道24号 |
西神自動車道 | 神戸市 | 三木市 | 国道28号 |
京都縦貫自動車道 | 京都市 | 宮津市 | 国道478号 |
北近畿豊岡自動車道 | 丹波市 | 豊岡市 | 国道483号 |
尾道・福山自動車道 | 尾道市 | 福山市 | 国道2号 |
東広島・呉自動車道 | 東広島市 | 呉市 | 国道375号 |
本州四国連絡道路 | 神戸市 | 鳴門市 | 国道28号 |
都窪郡 | 坂出市 | 国道30号 | |
尾道市 | 今治市 | 国道317号 | |
今治・小松自動車道 | 今治市 | 西条市 | 国道196号 |
高知東部自動車道 | 高知市 | 安芸市 | 国道55号 |
西九州自動車道 | 福岡市 | 武雄市 | 国道497号 |
南九州西回り自動車道 | 八代市 | 鹿児島市 | 国道3号 |
那覇空港自動車道 | 那覇市 | 西原町 | 国道506号 |
04 高速自動車国道と一般国道自動車専用道路の違い
高規格幹線道路である、高速自動車国道と一般国道自動車専用道路の違いを比較してみましょう。
高速自動車国道 | 一般国道自動車専用道路 | |
最高速度 | 100km(※原則として) | 60km(※原則として) |
最低速度 | 50km | 設定なし |
利用料金 | 距離に応じる(+サーチャージ) | 無料(※路線によって料金が異なる) |
規模 | 全国 | 地域限定 |
一般国道自動車専用道路は路線によって料金等が異なりますので、走行の際は注意が必要です。
05 まとめ
私たちの生活に欠かせない高速道路・高規格幹線道路について見てきました。
ワトキンス・レポートにより始まった「日本の高速道路ネットワーク整備計画の進捗率」は、2023年末で85%を超えています。厳しい自然環境の日本列島において高速道路網を整備するのは大変なことですが、高速道路ネットワークによって私たちの生活が豊かになるのは間違いありません。
これからも、私たちの生活を支える高規格幹線道路を大切に利用しつつ、削減できる経費は上手にETCカードを利用して削減していきましょう。
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